フェラーリにとって「レースで勝つこと」がなぜ重要だったのか。

多くの自動車メーカーは「ロードカーを売って利益を出し、その一部をレース活動に回す」という構図で成り立っています。 しかしフェラーリは歴史的に、その逆とも言えるビジネスモデルを掲げてきました。 すなわち、「レースで勝つためにチームを維持する資金を、ロードカーの販売でまかなう」という考え方です。
創業者エンツォ・フェラーリは、あくまでレースの人でした。 彼にとってロードカーは「レース活動を続けるための手段」であり、 その結果としてフェラーリの市販車は、いつもどこかにレース直系のフィーリングを宿してきました。
250GTOのようなホモロゲーションモデルは、まさに「レースで勝つために仕方なく作ったロードカー」ですし、 F40やF50、ラ フェラーリ、SF90ストラダーレといったハイパーカーも、 その時代のレーシングテクノロジーをロードカーに落とし込むことでブランド頂点としての役割を担っています。
レースで勝つことは、単にトロフィーを増やすだけではありません。 ・エンジンやシャシー、空力の技術を加速度的に進化させるテストベッドになる ・過酷な条件での耐久性や信頼性を検証する場になる ・ブランドイメージを世界中に広める強力なマーケティングになる といった効果があります。
フェラーリのロードカーに乗るということは、 そうしたレース由来の技術やストーリーを、日常の中で体感するということでもあります。 たとえサーキットを走らなくても、エンジンの回り方やブレーキの効き方、ステアリングの手応えには、 「レースのために鍛えられてきたブランド」の片鱗が必ず顔を出します。
フェラーリの歴史を眺めるときは、「この時代、レースで何が起きていたか」という視点を一つ加えてみると、 それぞれのモデルの性格や位置づけが、ぐっと立体的に見えてくるはずです。